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執筆者の写真うらのりょうた

青ヶ島村〜日本一到達困難な秘島〜

更新日:2023年7月3日

「日本一到達困難な島」と言われる東京都青ヶ島村(あおがしまむら)の青ヶ島。東京都の南に浮かぶ"秘島"で、日本で最も人口の少ない市町村でたったの約160人しか暮らしていませんが、その絶景に世界が注目しています。



アクセス方法

到達困難な理由は交通の脆弱性にあります。まずは東京からフェリーか飛行機で八丈島に向かい、そこからフェリーかヘリで青ヶ島へ。直接青ヶ島に行くことはできません。


船の就航率は50%を下回る月もしばしば。つまり、2日に1度は欠航。「なぜそんなに低いのか」と思うかもしれませんが、断崖絶壁の孤島と晴れていても荒れ狂う海を見れば納得です。船の就航率は季節によって差があり、80%近くになることもあるので季節も重要。参考に、2022年の12月は42.1%、2021年の12月は27.7%でした。就欠航は、当日の朝7時に決定されます。


ヘリは船より就航率が高いですが、1日たったの1便、わずか9席とチケットが入手困難な上に11530円と高額です。しかも、決して就航率100%というわけではありません。出発の1カ月前、朝9時から電話で予約可能ですが、争奪戦必至です。

ヘリは予約困難

まとめると、青ヶ島への交通手段は、


①東京・竹芝ー船ー船ー青ヶ島

②東京・竹芝ー船ーヘリー青ヶ島

③東京・羽田ー飛行機ー船ー青ヶ島

④東京・羽田ー飛行機ーヘリー青ヶ島


の4択。


①の選択肢は25000円ほどと最もリーズナブルですが、青ヶ島に到達できる可能性は低いです。④の選択肢は50000円ほどと最も財布に厳しいですが、青ヶ島に到達できる可能性は高くなります。


時刻表

時刻表は時期などによって変わりますが、大まかに以下の通りです(2022年現在)。


東京・竹芝ー八丈島

フェリー2230ー0855


東京・羽田ー八丈島

ANA0730ー0825


八丈島ー青ヶ島

ヘリ0920ー0940

(受付は8:50まで)


フェリー0930ー1230


青ヶ島ー八丈島

ヘリ0945ー1005

(受付は9:15まで)


フェリー月〜水1250ー1550

フェリー金、土1330ー1630

(木日は休み)


1度目の挑戦

ちなみに、到達困難な島ですが、飛行機とヘリを乗り継ぎ、青ヶ島からのフェリーが出れば日帰りで行くことも可能です。


悩んだ末に、私はコストパフォーマンスを考えて全てフェリーで行くことにしました(選択肢の①)。青ヶ島に行く方法としては最も安く、トータルで25000円ほど。しかし、10月だったこともあって台風が直撃し、フェリーは欠航してしまいました。


2度目の挑戦

このままではいつまで経っても青ヶ島にたどり着くことができない。ということで、八丈島までを飛行機、青ヶ島までをヘリという最もコストパフォーマンスは悪くても確実性のあるプランに変更(選択肢の④)。年が明けた1月下旬に2度目の挑戦を試みました。


飛行機はANAの70周年企画である片道7000円キャンペーンを活用してすんなり予約することができました。ヘリの予約は1カ月前の9時から電話で受け付けます。9時から通話ボタンを連打しますが、まるでジャニーズのコンサートのチケット購入のように電話はつながらず。9時44分につながりましたが、とっくに9席は埋まっており、私は4番目でキャンセル待ちをすることに。

鬼電です

翌日は9時20分頃に電話がつながり、復路のヘリは予約ができました。万が一しばらく帰られなくなった時に備えて会社の休暇も1週間取得。


次に青ヶ島村の人気ユーチューバーさんのご実家である「民宿かいゆう丸」さんに連絡しますが、往路のヘリが予約できていないと伝えると「船はあてにできないからねぇ…」と何とも言えない反応。フェリーは宿が決まっていなければ乗船拒否されますし、宿も往復のヘリが確保できていなければ予約できない場合があるので、観光客は「鶏が先か、卵が先か」という八方塞がり状態に苦しめられます。


迎えた当日。結局、往路のヘリはキャンセルが出ませんでした。フェリーが出港することに賭けます。「無事に青ヶ島に行けるのか、そして帰られるのか」という不安が押し寄せ、いまだかつてない緊張感が体を包みます。JRと京急を利用してビュンっと羽田空港へ向かい、出発の1時間前に到着。余裕を持って搭乗口へ。天候はあいにくの曇り。待合室のテレビは「今季最強寒波」「10年に1度の寒さ」「東京の予想最低気温−3度」などと伝えており、八丈島と青ヶ島が少しでも暖かいことを祈ります。

羽田空港

羽田空港の混雑で出発は30分近く遅延。フェリーに間に合うか暗雲が立ち込めます。機内を見渡すとざっと100人以上は搭乗。この中から(あるいは八丈島にいる人から)選ばれし9人しかヘリで青ヶ島に行くことはできません。


飛行機は予定より15分ほど遅れて8時40分に着陸。わずかな希望でヘリのキャンセル待ちの確認に行きますが、9時営業開始なので確認できず。フェリーを確認すると、なんと接岸できない場合八丈島に戻る「条件付き」ではあるものの、出港するではありませんか!

条件付き出港

ヘリはおそらく無理だろうと諦め、急ぎ足で底土港を目指します。なんとか9時20分の乗船締め切りに間に合い、接岸できず八丈島へ戻る可能性も残しながらも定時の9時30分に動き始めました。乗客は私を含め6人のみ。かいゆう丸さんに連絡すると、無事に接岸できたら泊めていただけることに。さらに、「レンタカーは借りてますか」と聞かれ「借りていない」と答えると「港から宿まで1時間ほどかかりますよ」と言われ困っていると「じゃあ港まで迎えに行きますよ」と手を差し伸べてくださりました。不安が少し晴れて、遠くに離れていく八丈富士もより一層美しく見えます。

八丈富士を眺めながら

そして、3時間にわたる船旅の末、フェリーは接岸…

ゆらゆら揺られて


できました!!



桟橋はかなり揺れましたが、無事に青ヶ島に上陸。物資が次々とクレーンに吊るされて運び込まれます。

断崖絶壁の港

あおがしま丸

かいゆう丸さんのクルマに乗り込み間もなく、「あっクジラ!」の声にビックリ。海を見るとなんとクジラの姿が。しかも1頭ではなく5頭ほど。派手な出迎えに青ヶ島の底知れない魅力を感じずにはいられません。

いきなりクジラがお出迎え

車内ではさらに衝撃の事実が明らかに。なんと、この日は悪天候でフェリーが欠航になる予定だったのです。そのため、前日の日曜日はもともと運休にも関わらず、臨時便を出していたそう。2日連続でフェリーが出たのは奇跡だったのです。


(追記)私がフェリーに乗った日は23年1月23日でしたが、なんとこれが結果的に1月最後の出港。23年1月は31日間でたったの7回しか出港しませんでした(9、13、16、17、18、22、23日)。本当に幸運でした。


宿に着くと昼食が用意されていました。豚キムチにカクテキというキムチ&キムチな組み合わせ。

お昼ご飯

食事中、私と同じフェリーで訪れていた同世代(20代)の方と意気投合。食後、一緒に青ヶ島一の絶景スポットである「大凸部(おおとんぶ)」に向かうことに。市街地から20分ほどで行けますが、藻や木々が生い茂り、急峻で滑りやすいため危険です。複数回の噴火でできた「二重カルデラ」という特異な地形。正直、青ヶ島には大凸部くらいしか見どころはないのですが、この景色を見るだけでも訪れる価値があります。360度どこを見渡しても海。地球の真ん中にいる気分です。「幻想的」「非現実」「ゲームや絵本の世界みたい」「冒険家の気分」。近年は海外メディアにも「死ぬまでに見るべき」などと取り上げられています。

大凸部からの絶景

1785年の大噴火では島が壊滅し、無人島となりましたが、佐々木次郎太夫らの尽力により1824年に還住(島民帰還)を果たしました。


大凸部のほか、佐々木次郎太夫の墓や島唯一の郵便局、ほとんど売り切れの自動販売機、島唯一のガソリンスタンド、島唯一の信号、島唯一の小学校、青ヶ島酒造などを巡り、島唯一の商店で島の名物「青酎」を購入。東京に戻って会社の先輩や友人と楽しみます。お土産屋などはありません。

佐々木次郎太夫の墓
青ヶ島郵便局
島唯一の商店
青酎

夜ご飯は見た目よりボリュームたっぷりで大満足の郷土料理。特に、刺身を島とうがらしや辛子、ショウガで味付けしたものがとても美味しかったです。

豪華な夜ご飯

翌朝、朝食を済ませた後、島を出るまでにもう一度見ておきたいという衝動を抑え切れずに再び大凸部へ。朝霧に包まれていたものの、それもまた幻想的なものでした。

朝の青ヶ島

ヘリポートへ向かうと、この日も海にクジラが見えました。天気が良く、半袖でも大丈夫なほどの暖かさでしたが、5分後には雨が降り出し、肌寒く。島の天気は変わりやすい。小屋の中に保安検査場があり、身体検査をされますが、持ち物のチェックなどはされません。ただ、島の警察の方が来られて動きを監視しています。もちろん東京都内なので警視庁の方。港にもいました。


同じフェリーで来て、大凸部に訪れるなど島で生活をともにした方はヘリの予約が取れず、一緒に脱出することが叶いませんでした。フェリーも欠航となり、翌日以降も1週間以上出なかったので完全に閉じ込められてしまった格好です。基本的に現金しか使えない状況ですので、私の現金と電子マネーを交換し、それで「しばらくしのぐ」と話していました。


人生初のヘリ。爆音に圧倒されますが、乗ってみると音と揺れは意外なほど気になりません。ヘリポートには島で生活をともにした方が見送りに来てくれて、警察の方たちとともに大きく手を振っています。

人生初のヘリ

時速280㌔ 、20分ほどの遊覧飛行は優雅で、1万円以上の価値があるかもしれません。「YES!なんちゃらクリニック」の気分です。空中から見る青ヶ島も幻想的で、まだ空想世界にいるような余韻が機内に充満していました。

空から見た青ヶ島

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