岩手県花巻市出身の童話作家・宮沢賢治は、岩手県を理想郷と捉え、「イーハトーブ」という言葉を生み出しました。宮沢賢治の作品にはイーハトーブの世界観が随所に描かれています。代表作である「銀河鉄道の夜」は、小学校の教科書などにも用いられていますが、私は読んだ記憶が全くありません。そこで、名作を通じて岩手県が舞台の美しい世界観に浸ってみることにしました。
孤独な主人公「ジョヴァンニ」は「ザネリ」にいじめられていました。母は病気で寝込み、父は仕事から帰ってこず、監獄にいると悪い噂まで立ちます。
しかし、幼馴染の「カムパネルラ」だけはジョヴァンニの味方でした。彼らは父同士も親友で、とても仲良しでした。
祭りの夜、2人はいつのまにか銀河鉄道に乗って旅を始めていました。幸せで不思議な時間が続きます。「おっかさんは僕を許してくれるだろうか?」。カムパネルラの突拍子もない発言に「?」となりますが、親に黙って旅をしていることへの後ろめたさから出た言葉だと思っていました。
物語の終盤にカムパネルラの姿が消えてしまい、気づくと銀河鉄道の旅が始まった丘の上に戻っていました。
まちに戻ると人だかりができています。川に落ちたザネリを助けたカムパネルラが命を落としてしまっていたのです。前述した「おっかさんは僕を許してくれるだろうか?」という言葉は命を犠牲にして天国の母の元へ行ってしまうことを懺悔していたのです。
「僕はおっかさんが本当に幸いになるのならどんなことでもする。だけど一体どんなことがおっかさんの幸いなんだろう?誰だって一番よいことをしたら幸いなんだね。だからおっかさんは僕を許してくれると思う」
ハッピーエンドではなく、なんとも言えない気持ちになる作品でした。ただただ宮沢賢治のファンタジーな世界観に感服です。現実世界に戻ってこられたジョヴァンニの姿からは本当の幸せ、生きることの大切さを学ぶことができました。
【参考文献】
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』新潮文庫、1989
杉井ギサブロー監督. 銀河鉄道の夜. 1985. 角川書店, 2014. (DVD).
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