行き交う者が還ると書いて「行者還(ぎょうじゃがえり)トンネル」。
行者還岳の登山口に位置し、文字通り難所として知られています。
真っ暗闇のトンネルの中からは濃い霧が噴き出しています。通行止めの標識はよく見ると18〜6時限定(冬季も通行止め)。夜間の通行は危険なのでしょう。あまりに物々しい雰囲気だったため、運転する友人が入り口の手前でクルマを停めます。行こうか行かまいか思わず躊躇してしまいましたが、目的地を目指して前に進むことにしました。トンネル内は照明もなく、ヘッドライトをつけていても数㍍先しか見えません。全長は1㌔以上に及び、引き返すことはできませんし、対向車が来たら大変なことになってしまいます。
もしヘッドライトがなければ、真っ暗闇。前か後ろかもわからなくなり、世界のどこに自分がいるのかわからない状態になるります。徒歩で通り抜けようとすると、100%メンタルが持ちません。
やっとの思いでトンネルを抜けると紀伊山地の山深くに位置する上北山村(かみきたやまむら)。標高が高いため「近畿の屋根」と呼ばれ、日本百名山に選ばれた大台ヶ原などの山々に囲まれています。隣接するまちと同じく林業が盛ん。
トンネルまではみたらい渓谷などを目的としたクルマがちょこちょこいましたが、いよいよ対向車もゼロに。日本の原風景が広がっており、獣が出てきそうです。感動とともに、タイムスリップしたようで少し不安な気持ちも。通行禁止となる夜は恐ろしくて走れそうにありません。
冒頭でお話しした行者還岳は世界遺産にも登録されている古道「大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)」を構成する一部。昔は人が住みつかないほど険しいエリアだったようです。
最寄り駅までは1時間半、バスは1日1本。観光パンフレットの表紙に書かれたキャッチコピーは「おくのおく 奈良県の奥の奥にある村」。手付かずの自然が最大の魅力です。
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