「ボーボー」。五泉市(ごせんし)の咲花温泉街を歩いていると少し離れた場所から鈍い音が聞こえてきました。工場の音でしょうか。それとも、クルマのクラクションでしょうか。「ボーボー!」。謎の物体は移動しているようで、音が少しずつ大きくなります。
「蒸気機関車かもしれない」。
確証はありませんでしたが、高校生以来の?全力ダッシュで温泉街を駆け抜けて咲花駅まで向かいました。すると、10分ほど前までいなかった人だかりが。駅に入った、まさにその瞬間に蒸気機関車がホームに滑り込んできました。慌てて撮った写真はブレブレでしたが、黒く大きな鉄の塊が黒煙を吐き出し轟音を立てながら走る姿は目に焼き付いています。ホームの人々と乗客が手を振り合い、私の隣では年上の女性が興奮して絶叫。乗組員が火の粉が舞う火室に石炭を入れる作業はダイナミックかつ、餅つきのようにリズミカルでした。
蒸気機関車が走り去った後、先ほど絶叫していた女性が私の元へやってきました。夫と一緒に来ていたようです。「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!凄く興奮しちゃって。(動画などに)声が入ってしまっていたら本当に申し訳ないです!」。どうやら、丁寧に謝りに来てくれたようです。「夫とクルマでヤマト(どこのヤマトでしょうか)にそばを食べに行っていたんです。そうしたら、突然目の前に蒸気機関車が現れて。私たちのクルマ以外にも何人かそれに気がついて、まるで映画のカーチェイスのように先回りしてここまで来たんですよ」。蒸気機関車には多くの人々を惹きつける何かがあるようです。
私が幸運な出来事に巡り会えたのは、磐越西線で東下条駅(阿賀町)まで行き、そこから隣の咲花駅(五泉市)まで阿賀野川右岸経由で散策していた最中でした。磐越西線では蒸気機関車が定期運行しているそうです。
咲花は阿賀野川左岸に位置する温泉街。水面に浮かぶ旅館の姿が美しかったです。開湯は1954年と比較的近年。キッカケは阿賀野川に咲いている湯の花(本当の花ではなく、不溶性の成分のこと)が発見されたことでした。湯の色は鮮やかなエメラルドグリーン。
阿賀野川のほかに、早出川が流れる五泉市。早出川では多くの人々が水遊びを楽しんでいました。
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