福岡県は古代からアジアの玄関口という地理的優位性を生かして九州、そして日本における重要なポジションを担ってきました。2〜3世紀に卑弥呼が統治した邪馬台国も福岡県に存在したとされています。そして、福岡市は「行政の福岡(現在の天神)」「商業の博多」の2枚看板で九州の行政、経済を今日に至るまでけん引していくこととなります。
7世紀には九州の行政の中心として大宰府が置かれた福岡県太宰府市も九州随一の繁栄を見せました。
しかし有史以来、九州最大の都市の座は何度も入れ替わっています。今回は九州最大の都市の変遷をご紹介します。
国際港湾都市となった長崎市
古代から九州最大の都市として栄えた福岡県や福岡市に代わり、戦国時代に主役に躍り出たのが長崎市。
1571年のポルトガル貿易船の入港以来、西洋に開かれた港として花開き、1600年代以降は九州一の都市に君臨します。その後、鎖国政策によって人口を減らすと、九州は群雄割拠の時代に突入。
江戸時代に入ると鹿児島市や熊本市が人口を伸ばし、長崎市に加えて福岡市、鹿児島市、熊本市が九州一の都市を争うようになります。
島津氏の城下町として発展した鹿児島市
鹿児島市は薩摩藩・島津氏の城下町として九州最大規模の都市に発展。長崎市と同じく大陸に近く、琉球を中継地とした貿易が成長の原動力になります。16世紀、フランシスコ・ザビエルが上陸してキリスト教伝来の地となると、19世紀には島津氏がヨーロッパの機械文明を取り入れ日本の近代工業化発祥の地に。明治維新では薩摩藩の西郷隆盛、大久保利通らが活躍。「西南戦争」で明治政府に敗れたものの、「市町村制度」が始まった1889年の段階では鹿児島市が人口5万7465人で九州最大の都市であり、今に続く南九州最大の都市としての地位を確固たるものにしました。
1920年に実施された「第1回国勢調査」では、長崎市が人口17万6534人で九州最大の都市だったものの、鹿児島市も10万3180人で2位をキープしています。
九州の中核都市となった熊本市
明治時代に存在感を高めたのが熊本市でした。明治政府は西南戦争を起こした鹿児島県に睨みを効かせるために全国で4カ所のみであった鎮台(軍隊)を設置。地理的にも九州の中心であった熊本市を「九州の中核都市」と位置付けました。政府の出先機関がこぞって進出し、企業の事業拠点も集中。1900年の「鉄道唱歌」では「九州一の大都会 人口五万四千あり」と歌われました。
高度経済成長を支えた北九州市
1901年に官営八幡製鉄所が操業を開始するなど日本有数の工業地帯となった北九州。1963年に門司市、小倉市、戸畑市、若松市、八幡市の5市による大規模合併で九州初の政令指定都市となる北九州市が発足し、九州地方最大に躍り出て、日本の高度経済成長を支えました。人口のピークは1979年で106万9117人。
そして、福岡市の一強時代へ
福岡市は1899年の博多港開港、1911年の九州帝国大学開校などで地位を高め1929年に九州最大の都市に返り咲きましたが、前述した北九州市の発足で1963年に2位に転落。
それでも、高度経済成長の終焉で北九州市の成長が鈍化したことに加え、山陽新幹線の博多駅延伸などで1979年に人口107万人を突破し、再び九州最大の都市になりました(同年は奇しくも北九州市が人口のピークを迎えた年)。成長は21世紀に入っても続き、2011年に京都市を、2015年には神戸市の人口を抜いており、九州最大の都市としての地位を不動のものに。2020年には160万人を突破するなど今後も成長が期待されます。
【参考文献】
木下斉『福岡市が地方最強の都市になった理由』PHP研究所、2018
八幡和郎『日本史が面白くなる47都道府県県庁所在地誕生の謎』 光文社知恵の森文庫、2020
アゴラ「明治22年:市町村発足と県庁所在地の人口順位」、2020、〈https://agora-web.jp/archives/2049371.html?amp=1〉、(2023年1月閲覧)
フクリパ「政令指定都市の人口増加数・率で連続トップ!福岡市人口増加の要因と戦略とは。」、2021、〈https://fukuoka-leapup.jp/biz/202109.317〉、(2023年1月閲覧)
事業構想「「九州の中心」を奪還できるか 熊本のチャンスとリスク」、2018、〈https://www.projectdesign.jp/201809/area-kumamoto/005373.php〉、(2023年1月閲覧)
三井住友トラスト不動産「このまちアーカイブス 熊本県熊本市」、〈https://smtrc.jp/town-archives/city/kumamoto/p04.html〉、(2023年1月閲覧)
熊本市「市の概要」、〈https://www.city.kumamoto.jp/hpkiji/pub/List.aspx?c_id=5&class_set_id=2&class_id=104〉、(2023年1月閲覧)
鹿児島市「鹿児島市の生い立ち」、2020、〈https://www.city.kagoshima.lg.jp/kikakuzaisei/kikaku/seisaku-k/shise/shokai/shoitachi.html〉、(2023年1月閲覧)
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