訪問都道府県:熊本県、大分県
期間:２泊３日
走行距離:1396㌔（２日目終了時856㌔）
モデル:初代（2011～）
「ガタンガタンガタン！」。突如として左フロントタイヤから異音が響き渡り、車内が激しく揺れ動きます。大分旅行に暗雲が立ち込めました。
ホンダ・N-BOXはレンタルした当初から様子が変でした。車軸がぐらついているような感覚で、時速100㌔を超えると車内で何かが共鳴し始めます。発進時のレスポンスも醜い。「ん？」とは思いましたが、しっかり整備されていると信じて走り続けました。
しかし、旅の２日目に悪夢は起きてしまいました。午前６時55分、走行距離は400㌔ほど。県道28号森耶馬溪線、大分県玖珠町の山中にクルマを停車させます。
平静を取り戻し、レンタカー会社と保険会社に連絡をすることにしました。「旅の計画は狂ってしまっても、レッカー車さえくれば安心」。安易に考えていた私はスマホの画面を見て言葉を失いました。圏外なのです。ソフトバンクとドコモ、２台のスマホを持っていましたが、どちらもアウトです。さあどうする。
絶望の淵に立たされる中、１台の黄色い軽自動車が走ってきました。勇気を振り絞って、両手を大きく振ると、私の目の前で停車してくれました。運転席には地元のおばちゃん。事情を説明すると、親身になって解決策を考えてくれました。結局、レンタカーを放置し、おばちゃんのクルマに乗せていただき下山することに。
おばちゃんは、ミヤマキリシマという花の群生地に向かう途中でした。友人との待ち合わせがあるにも関わらず、私を優先して電波のつながる最寄りのガソリンスタンドまで届けてくれました。ミヤマキリシマが咲く季節で良かった。
朝日が照りつける中、ガソリンスタンドの前でレンタカー会社に連絡。「パンクの修理費用はお客様負担です。保険会社とやりとりしてください」との返答でした。
続いて、保険会社に連絡すると、衝撃の事実を突きつけられます。「レッカー会社を探しますが、現場には行きも帰りもお客様自身で足を運んでください。レッカー車に乗せることはできません。また、車両は提携先の整備工場に運びますが、代車はありませんので、その後の交通手段はお客様自身で用意してください」、「移動手段はありますか」。悪意はないのでしょうが、なんとも鬼畜な質問です。縁もゆかりもない土地でまともな移動手段などありません。現場までは10㌔以上。歩道もない険しい山道を徒歩で往復することすら覚悟しました。代車もないならこの旅は終了です。
電話を切ると、ガソリンスタンドのおじちゃんが、「中、使ってくれて大丈夫ですよ」と声をかけてくださり、商談室のような場所で保険会社からの連絡を待つことに。年季の入ったチェアに座り、テーブルの上の金魚鉢で泳ぐ小さな魚を眺めながら深いため息をつきます。窓の外ではひっきりなしにクルマが給油していました。こんなのどかなところなのに、早朝から活気があるなぁと感心してしまいます。
気長に待ち続けると、保険会社から「レッカー会社が見つかった」と連絡が入りました。直後、レッカー会社から電話がかかってきました。感じのいいあんちゃんです。なんとガソリンスタンドまで迎えに来てくれるそう。現場に向かう際、お礼を伝えると、「当然のことですよ！それが田舎のいいとこっちゃ。保険会社はマニュアル通りにしか動いてくれないんでね」。バイク好きのあんちゃんは滋賀県まで走ったこともあるそう。九州なら「やっぱり大観峰。宮崎の海沿いもいい」とオススメの場所を教えてくださりました。
さらに幸運だったのは、ガソリンスタンドのおじちゃんが「うちでよければ直しますよ」と修理を名乗り出てくれたこと。これで道筋が立ちました。クルマはあっという間にガソリンスタンドに搬送され、タイヤも新品になりました。まさにプロの仕事です。
１つ、気がかりなのはタイヤのパンク原因です。あんちゃんがタイヤを見て一言、「こんなんおかしい。異常ですよ」。パンクには経年劣化と、釘などが刺さり穴が開くものの２種類がありますが、あきらかに前者のようです。
整備不良でタイヤがパンクしたにも関わらず、レンタカー会社は「支払いはお客様負担」の一点張りです。あんちゃんが背中を後押ししてくださり、電話をかけ直すと、おじちゃんも証言に加わり、３人で抗議。何とかタイヤ代を請求できました。
最後に、おっちゃんが廃タイヤをビニール袋に包むと、「証拠に持って帰れ！」とトランクに積み込んでくれました。ささやかですが、レギュラー満タンでお返し。
最初に出会ったおばちゃんにも改めて感謝を伝えたい次第です。
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