タイトルとブックカバーに惹かれて手に取った1冊。
舞台となる新潟県新潟市は「ニューフードバレー構想」のもと、政令指定都市の食料自給率が軒並み1桁台の中、「63%」という異次元の数字を叩き出している自治体です。「小さい単位を大事に」をテーマに、自治会加入率は東京23区が50%に対して、新潟市は90%。持ち家率、保育施設、老人ホームが政令指定都市で1位になるなど「安全安心」のまちづくりを掲げます。
新潟市はゼロメートル地帯を農地化した点や、港湾都市である点でオランダに非常に似ているといいます。新潟市は「日本のオランダ」になり得る可能性を秘めているのです。自ら稼げるポテンシャルを発揮するために記者から市長に転身したのが著者である篠田昭氏。取り組みとして、賞の設立や展示会の開催、完全米給食の実現、6次産業の推進、農業特区の申請など次々に改革を推し進めていきます。石破茂氏も「銀座で3万円のイタリアンを食べるんだったら、新幹線に乗ってきれいな田園風景を楽しんで新鮮な料理を味わった方が良い」と絶賛。
改革は草の根でも広がります。野内隆裕さんは20代で新潟市へUターン。江戸時代から信濃川沿いを「通」、直行を「小路」と呼ぶ新潟市の歴史ある路地の魅力にハマり、まちあるきを始めます。やがてグループ活動になり、新潟市のカリスマに就任し、路地サミットを誘致、NHKの人気番組『ブラタモリ』では案内役に。
能登剛史さんは2000年によさこい踊りの魅力を目の当たりにし、即座に勤めていた会社に辞表を提出。その足で高知市へ向かいます。熱意をぶつけて「新潟でも新しい踊りを」と訴えかけました。よさこい踊りの魅力を全国に発信したかった高知市と意気投合。協力者を集めてグループ活動へと拡大していきます。大学で講演し、大学生に素晴らしさを語って回りました。2002年には新潟県から600万円の助成金を得て「にいがた総おどりフェスティバル」を開催。今では3日間で20万人が訪れ、30億円の経済効果を生み出すビッグイベントに成長しています。
新潟県民の新進気鋭な姿勢を見習いたいです。
【参考文献】
篠田昭『緑の不沈空母』幻冬社、2019
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