首都とは何か。一律の定義はなく、「政府のある都市」、「国王のいる都市」など国よって異なります。例えばオランダの場合、憲法上の首都は最大都市・アムステルダムですが、事実上の首都は政府があり国王がいるハーグとかなりややこしい。
日本の場合は天皇の「遷都宣言」を持って「天皇のいる都市」に首都の移転(遷都)を繰り返してきました。天皇が変わったり、疫病が流行したり、占いによってめまぐるしく遷都を繰り返した時期もあります。
一般的に、現在の首都は東京と考えられていますが、1869年に出された宣言は「奠都(てんと)宣言」であり、新たに都を定めたものでした。つまり、東京には遷都していないのです。実は、東京を首都と定める法律もありません。そのため、今でも「首都は京都」と主張する京都の方もいるようです。
「古都」といえば京都市を指すことが多いです。しかしながら、奈良県も数多くの首都が置かれた「古都」であり、武家政権が置かれた神奈川県鎌倉市も「古都」といえなくもありません。京都市に限らず、一時代を築いた日本各地の古都に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
ヤマト政権誕生以降の遷都の歴史
ヤマト政権(奈良県桜井市)4〜7世紀
大和(奈良県)を中心として畿内の政治勢力が連合してできました。以後、首都の位置は奈良盆地から北上していき近畿地方を中心に変遷していきます。
飛鳥京(奈良県明日香村)不明〜694年
複数の宮跡が散在するなど、首都としてはまだ本格的なものではありませんでした。
藤原京(奈良県橿原市)694年〜710年
日本で最初の本格的な都「藤原宮」が置かれました。わずか16年の短命に終わりました。
橿原市は初代天皇、神武天皇が日本を建国した地。建国の日と推定される2月11日は「建国記念の日」として国民の祝日の一つとなっています。橿原神宮には神武天皇が祀られています。
平城京(奈良県奈良市)710年〜784年
メインストリートである朱雀大路には正門「朱雀門」 がそびえ立ちます。仏教勢力が力を持ちました。「せんとくん」 は2010年に遷都1300年を記念して誕生したマスコットキャラクター。740年恭仁京(くにきょう、京都府木津川市)、744年難波京(大阪府大阪市)、745年紫香楽宮(しがらきのみや、滋賀県甲賀市)へと遷都し、同年のうちに平城京へ戻りました。
長岡京(京都府向日市)784年〜794年
10年の短命に終わりました。
平安京(京都府京都市)794年〜1869年
1000年の都。日本の歴史上最も長く続いた首都です。1180年、平清盛の手によって4カ月だけ福原京(兵庫県神戸市)に遷都しています。また、武家政権の鎌倉幕府が存在した時期もありますが、遷都はしていません。
東京都1869年〜
明治天皇が奠都(てんと)宣言を出し、東京都は首都として歩み始めました。
【参考文献】
八幡和郎『日本の古都がわかる事典』日本実業出版社2016
吉村武彦ほか『古代の都ーなぜ都は動いたのか』岩波書店、2019
滝音能之『地図でスッと頭に入る古代史』昭文社、2021
Comentários