酒、鮭とともに食文化を育んできた村上(むらかみし)は鮭と酒と人情(なさけ)の「三さけのまち」といわています。
市内には黒壁の安善小路、松尾芭蕉も宿泊した井筒屋さん、地元の酒を取り扱う田村酒店さんなど歴史あるまちなみが残ります。鮭に関する施設も多く、博物館「イヤボヤ会館」、1626年創業の「きっかわ」さんの天井からぶら下がった大量の鮭は圧巻。
この日、粟島に訪れていた私は16時35分に村上市の岩船港へ戻りました。17時30分まで営業しているきっかわさんを見学するには朝と夕に1日2本運行している村上方面行き新潟交通観光バスに乗らなければ間に合いません。残念ながら港にバスは通っておらず、16時45分に岩船下大町バス停にいる必要がありました。港からバス停までは800㍍。下船した時、時計は既に16時38分を指していました。7分で800㍍。走れば無理な距離ではありません。GoogleマップとGoogleアースで予習もバッチリ。私は住宅街を全力疾走し、16時44分にバス通りに到着しました。
しかし、バス停が見当たりません。そうこうしている間に手前のガソリンスタンドがある交差点の信号でバスが停車しているのが目に入ってきました。私が郵便局の前で立ち尽くしていると、信号の先にはげた緑色をしたバス停の看板を発見、と同時に信号が青に変わりゆっくりと動き始めるバス。私は最後の力を振り絞り「私はバスに乗りたいんだ」と目と体で訴えながらバスに向かって走りましたが、無情にもバス停を通過。私の横をあざ笑うかのように走り去っていきました。バス停までは残り約30㍍。
電車に乗るために岩船町駅へとぼとぼ歩き始めた私は目を疑いました。なんと、見たかった天井からぶら下がった大量の鮭があるではありませんか。創業170余年の「又上(またじょう)」さんです。16時48分のことでした。悪いことの後には良いことがあるものです。
村上市でしか見ることのできないこの光景は、「寒風干し」と呼ばれ、雄の秋鮭に塩をすり込ませして旨味を凝縮させる村上市伝統の保存食「塩引鮭」の製法。お土産で購入しましたが、保存食と侮るなかれ、絶妙な塩加減がたまりません。
「悠流里」さんでいただいた「はらこ丼」と「村上牛炙り丼」も絶品。はらこ丼は美味しいあまり、気づけば醤油すらかけずに完食していました。お通しで出てきた「鮭の酒びたし」も絶品で、お土産に。地酒の「〆張鶴」、「大洋盛」も飲みやすかったです。生酒は一度も加熱してないので口当たりスッキリ。新潟県で最も幸せな夜ご飯でした。別次元です。
「笹川流れ(ささがわながれ)」は日本海屈指の景勝地で、日本百景にも選ばれています。村上駅から電車で約2、30分、桑川駅か今川駅から徒歩で約2㌔、約30分ほどの場所に位置します。私は今川駅から歩きました。途中には海の家などが点在。砂浜では若い女性2人がレジャーシートを敷いて音楽を大音量で流しながら会話を楽しんでいました。国道沿いに堂々鎮座する「板貝さいの神」は立派で大きかったです。
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