江戸幕府の体制強化を目的に1639年から200年以上続いた日本の鎖国。1853年、浦賀(神奈川県横須賀市)にペリー率いる黒船が襲来すると事態は一変します。貿易や漁業の中継を目的に開港を要求し、1854年に日米和親条約を締結、下田、函館の2港を開港し、鎖国はあっけなく終焉を迎えました。
さらなる貿易の自由化を要求され1858年には日米修好通商条約を締結、函館、新潟、横浜、神戸、長崎の5港を貿易港として開港することを決定。
函館、横浜、長崎は翌年の1859年に開港を果たしましたが、神戸と新潟は出遅れました。
尊王攘夷運動や3港の開港により国内経済が混乱したことに加えて、神戸は朝廷のある京都に近いことから難航し、1868年の開港に。
新潟は信濃川の河口にあり、土砂が堆積して水深が浅いことが災いし、1869年の開港となりました。
ここからは異国情緒あふれる開港都市の見どころをご紹介します。
静岡県下田市
鎖国終焉の地。1854年の開港以降、異国情緒あふれる観光都市として発展しました。道の駅・開国下田みなと(ベイ・ステージ下田)では食事やお土産の購入ができ、下田港からは黒船に乗船することができます。
弥冶川(やじがわ)沿いのペリーロードは歩くだけでワクワクするエリアで、なまこ壁や石造り、あじさい、枝垂れなど昔ながらのまち並みが残ります。
北海道函館市
天然の良港として古くから発展していた函館市。津軽海峡を経て太平洋と日本海を行き来できる利便性の高さから開港に至りました。函館港の周辺は「ベイエリア」と呼ばれ、異国情緒漂う定番の観光スポットです。ベイエリアの象徴ともいえる「金森(かねもり)赤レンガ倉庫」は渡邉熊四郎氏が明治時代に開業した洋物店事業が原点。1988年からショッピングモール、ビアホール、イベントホールなどとして活用されています。
新潟県新潟市
日本海側の玄関口として開港。信濃川河口に位置し、古くから港町として栄えており、現在は日本海側最大の都市として発展しています。海の幸も山の幸も美味しい美食のまち。
神奈川県横浜市
横浜市の「みなとみらい21」は港町を象徴するエリアです。高さ296㍍の横浜ランドマークタワー、赤れんがパーク、プロ野球チーム・横浜DeNAベイスターズの本拠地・横浜スタジアム、神戸南京と長崎新地中華街とともに日本3大中華街に数えられる横浜中華街、客船が行き交う大さん橋などワクワクする場所が盛りだくさんで、何度訪れても飽きません。
横浜は西洋文化をいち早く取り入れ、鉄道、電話、アイスクリーム、ショートケーキ、食パン、ハム、シウマイ、ナポリタン、カクテル、ビール、ケチャップ、ごま油などさまざまな日本初が生まれました。
兵庫県神戸市
横浜とともに日本の近代化をけん引した神戸市。両都市には共通点が多いですが、横浜になくて神戸にあるものがあります。その1つが「外国人居留地」です。1923年の関東大震災で横浜は壊滅し以後、居留地は死語になったといいます。1995年の阪神淡路大震災で神戸も甚大な被害を受けましたが、建物の近代化が進んでいたため歴史の断絶は免れました。現在でも異国情緒を色濃く残し、高級ブティックが立ち並びます。
山側に目を向けると「北野異人館街」が広がり、洋風建築が立ち並びます。
横浜とともに西洋文化をいち早く取り入れ、洋服、靴、洋家具、洋菓子、ラムネ、ソース、紅茶、缶コーヒー、カフェ、バレンタインチョコ、中華料理、豚マン、映画、ジャズ、クリスマス飾り、ゴルフ、パーマネントなどさまざまな日本初が生まれました。神戸発祥と横浜発祥のものをクイズにするととても難易度が高そう。
長崎県長崎市
江戸時代、日本初の人工島である長崎市の出島は日本で唯一西洋に開かれた貿易港として栄えました。そのため、200年以上続いた鎖国は完全な国際的孤立ではないという意見もあり、現に、長崎市は1571年のポルトガル貿易船の入港をもって開港と定義し、2021年には開港450周年のイベントが市内各地で催されました。日本一歴史ある港町といっても過言ではありません。
日本最古のキリスト教建造物「大浦天主堂」や英国の商人の邸宅「グラバー園」など異国情緒漂う観光スポットが点在します。
【参考文献】
神戸新聞ネクスト「神戸と横浜、違いを見つけるのが難しいほどそっくり… 違いは震災の時期と規模?」〈https://www.kobe-np.co.jp/news/odekake-plus/news/detail.shtml?news/odekake-plus/news/pickup/202209/15604549〉、(2022年10月閲覧)
新潟中心商店街協同組合公式サイト「新潟ふるまち 開港5港」〈https://ssl.niigata-furumachi.jp/introduction/絵図が語る古町誕生-2/7-開港5港/〉、(2022年10月閲覧)
神戸市「神戸の近現代史」〈https://www.city.kobe.lg.jp/culture/modern_history/archive/history_01.html〉、(2022年10月閲覧)
Comments