新潟県にある島といえば、どこを思い浮かべますか。
多くの人が思い浮かべる佐渡島のほかに、実はもう1つ島があります。それが、粟島浦村(あわしまうらむら)の粟島です。
島としては日本屈指の大きさを誇り昭和時代には人口10万人を超えていた佐渡市に対し、粟島浦村は人口300人ほどの小さな島です。
粟島へは1日1往復しかフェリーが出ていません。私が乗船した日は粟島行9時ー10時35分の便と岩船行15時ー16時35分の便のみでした。粟島に到着する前にはBGMとして魔女の宅急便のサウンドトラックが船内に流れ始めました。粟島とジブリに縁はないはずですが、気分が上がります。
粟島に到着すると、港では旅館や役場の人が手を振っていました。フェリーからは物資を積んでいると思われる大型トラックが数珠繋ぎにが出てきます。
粟島に来て何としても食べたかったのが郷土料理の「わっぱ煮」。
下船してすぐ「食堂みやこや」さんに伺いました。が、店内には誰もいません。「すみませーん!」と叫んでも応答なし。「泥棒おらへんのかなあ」と勝手に心配しつつ退店し、島を散策しました。
目立った観光スポットはなく、島民も含めてほとんど人影はありません。海岸沿いを歩いていると、千葉県からやってきたという30代くらいの男性に話しかけられました。幼い頃に父と粟島に訪れたことが思い出となり、大人になってから毎年粟島に訪れて漁を楽しんでいるそう(アワビやサザエの捕獲は禁止されています)。海岸では大学生くらいの女性3人がインストラクターの男性に連れられマリンスポーツを、牧場では家族連れが馬と触れ合っていました。
1時間半ほど散策し、みやこやさんに戻ると、店を切り盛りするお母さんと現地実習で訪れた女子大生が出迎えてくださり、迷わずわっぱ煮定食を注文。
魚やネギなどの具材を入れたわっぱ(容器)に真っ赤になるまで焼いた灼熱の石を豪快に投入し、一気に煮立てるワイルドな料理。ベースは味噌汁ですが、大量の湯気とブクブクと泡が沸き立つ姿は勇ましく、熱さとともに口の中に広がる磯の香りは滋味深いものでした。魚は季節によって変わります。
メカブのように見えるものは海藻の一種、ギンバソウの酢の物で、新潟の郷土料理。
デザートで出てきたエゴネリ(イゴネリ)も海藻の一種で、こちらも新潟の郷土料理。もっちりとした食感で素朴な味わいでした。酢味噌をつけていただきます。
タコの酢の物も歯応えがあり美味しかったです。お盆を眺めてみると、粟島は酢を使った料理が多い。
食事中、お母さんが斜め向かいに座り、「役場の人?記者の方なら新潟日報さん?」と話しかけてくれました。ランチのお客さんは村上市など本土からやってくる公務員が多いそう。新潟県で新聞といえば新潟日報のようで、毎日フェリーに載せられて届きます。
粟島には中学校までしかないため、お母さんは高校で島を出て、新発田市で下宿生活を開始。卒業後も島に帰るつもりはなかったそうですが、みやこやの2代目として島に帰ってきてちょうど10年を迎えました。
「不自由だって思うことはありますよ。
でも、自然の豊かさは何にも変えがたいというか。
それに気付けたことがうれしくて。
不自由なのはどこでもそうじゃないですか。
都会だったら騒音とか。
昔はあれも欲しいこれも欲しいだったけど。
車もボロボロだけどもういいやって。
気にならなくなった」
年齢を重ねるとこんな素敵な考え方に辿り着くのでしょうか。
粟島でやるべきことも教えていただきました。1つ目は「ダマ」を獲ること。貝の一種だそうで、良い出汁が取れるそう。もう1つは港の東側の景色が綺麗だということ。観光パンフレットでも紹介されるような粟島らしい景観が楽しめます。
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